第80回日本臨床外科学会総会に参加しました。

 2018年11月22日~24日にグランドプリンスホテル新高輪で開催された第80回日本臨床外科学会総会に参加しました。今回は「安全な外科手術手技の確立」というテーマで、獨協医科大学第2外科の窪田敬一先生が会長を務められました。当科からは丹黒 章教授をはじめ、坪井先生、井上先生、高嶋先生、笹先生、鈴木先生と、西野が参加しました。
学会初日から東京に到着し、鈴木先生の発表を聞きました。鈴木先生は全国学会が初めてだったということもあり、非常に力が入っていて、緊張されていましたが、複雑な臨床経過の症例を、上手に堂々と発表されていました。会場の先生からの質問にもはきはきと答えており、一安心しました。

 今回わたくしは、「縦隔鏡下食道癌根治術を安全に導入するために」というタイトルで発表しました。シンポジウムを狙ったのですが、シンポジウムの演題はすべて胸腔鏡下食道癌手術で揃えられており、主題関連演題になってしまいました。さらに、株式会社ツムラ様のご厚意によりスポンサードシンポジウム「周術期管理から退院後のtotal support」というセッションで「食道癌術後の栄養および消化管機能回復への大建中湯の可能性」という口演をさせていただきました。どちらも、学会初日の発表でしたので、まだ当科のほとんどの先生たちは到着しておりませんでした。
 大建中湯に関しては、先輩である山本洋太先生から臨床研究を引き継ぎ、論文掲載というゴールまで何とかたどり着くことができました。そして、研究の結果からその有用性を実感し、その後も、食道癌術後には大建中湯の投与を継続しています。今回は、臨床試験の結果に加え、臨床試験後の症例データを追加集積し、さらに術後1年目までの栄養・体重について再度検討して発表しました。当科では術後早期は大建中湯を腸瘻から投与していますが、退院後は患者さんの希望に応じて内服してもらっています。意外と気に入って飲み続けてくれる患者さんが多いという実感がありました。そこで、実際の術後経過を追いかけてみると、半数近くの患者さんが1年以上内服を継続していました。そして、1年目までの体重を比較すると、大建中湯を長期間内服されている患者さんでは、見事に体重減少が抑制されていました。これは大建中湯が術後早期のみならず、手術からの遠隔期においても、栄養・消化管機能の改善に寄与している結果だろうと報告させていただきました。
 そのあとは、発表を終えた高嶋先生と鈴木先生とビールで乾杯し、さっさと寝て、翌日に帰還しました。他の先生方とは発表日時が合わずに、聞きにいけませんでしたが、みな無事に発表を終え、それぞれが大きな収穫を得て、帰ってきたものと思います。
 今回も非常に有意義な学会となりました。留守中に病棟業務を負担してくださった病棟スタッフの皆様、交通の手配をしてくださった医局秘書の皆様に御礼申し上げます。そして、このような貴重な機会を与えていただいた丹黒 章先生に深く感謝いたします。

文責 西野豪志(平成16年卒)

2018.11.26