教授挨拶

教授挨拶

このたび丹黒章前教授の後任として、令和3年8月より大学院医歯薬学研究部 胸部・内分泌・腫瘍外科学分野を引き継ぎました。私は平成8年に徳島大学を卒業後、教室の前身である第二外科に入局し、徳島大学および関連施設で研鑽を積んでまいりました。昭和29年に開設され、多くの関連施設を有する教室を主宰させていただくことの重責を感じながらも、先輩たちが築いてきた診療・研究を更に発展させ、時代に即した新しい医療を創り、徳島から全国そして世界に発信していきたいと考えております。

私どもの教室は、心臓血管を除く胸部領域の疾患を担当しており、診療科としては呼吸器外科と食道・乳腺甲状腺外科があります。呼吸器外科は、肺癌や縦隔腫瘍に対するロボット支援下手術などの内視鏡手術を中心に、進行癌に対しては呼吸器内科、放射線科と協力して集学的治療を行っています。また、当教室で開発した金属コイルマーキング法を駆使した小型肺病変の切除にも積極的に取り組んでおり、この方法を取り入れた新たなマッピング法は、東京大学を中心とした多施設共同研究を経て、近い将来保険収載される見込みです。食道外科は、3剤を用いる術前化学療法と低侵襲手術を組み合わせることで、根治性と安全性を両立した食道癌に対する治療法を確立しており、更なる治療法の改良に取り組んでいます。大変多くの患者さんを担当する乳腺外科は、乳腺外科医・形成外科医・放射線科医・病理医・薬剤師・看護師・超音波技師・遺伝カウンセラーなどの多職種が有機的に連動しながら、個々の患者さんに合った最良の治療を提供しています。甲状腺外科は、機能温存を重視した安全性の高い手術を行っており、内視鏡下甲状腺・副甲状腺手術も行っています。研究においては、教室がこれまでに取り組んできたテーマに加え、最近ではiPS細胞や人工知能、徳島大学が得意とする光工学を取り入れた研究も行っています。今後は基礎教室や工学部との交流をより深め、企業との産学協同研究も活性化することで、研究成果を臨床の場に活かす流れを加速していきたいと考えております。

これから教室を発展させるためにも、徳島の外科医療を支えていくためにも、最も重要な鍵を握るのは人材育成です。徳島大学では、消化器・移植外科、心臓血管外科、そして胸部・内分泌・腫瘍外科が「徳島大学外科」を形成し、若手外科医を育成していく環境が整っています。それぞれの教室、診療科、研究グループに多才な人材が集っており、良い関係を築きながら切磋琢磨しています。私に課せられた最も重要な使命は,医学生や研修医の皆さんにまずは外科に興味を持ってもらい、外科医として患者さんを治療するやりがいを伝え、研究で明日の治療を変えていく楽しさを感じてもらい、一人でも多くの若者に「外科の扉」を開けてもらうことだと考えております。そのためにも「元気ある教室」を作っていくことを目標に掲げ、尽力したいと考えております。

今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

令和3年8月