優秀論文賞を受賞しました。

日本胸部外科学会 GTCS優秀論文賞受賞

 先日、胸部外科学会の学会記でも報告しましたが、2022年の日本胸部外科学会が出版しているGeneral Thoracic and Cardiovascular Surgery(GTCS)に掲載された論文の中で、食道部門の優秀論文賞を受賞しました。
「Biomarkers predicting the response to chemotherapy and the prognosis in patients with esophageal squamous cell carcinoma」という論文で、私の学位論文になります。

 内容は、当教室で化学療法から開始された食道扁平上皮癌患者から採取した組織検体を、7つの遺伝子発現レベルをRT-qPCRを用いて測定し、化学療法前後での遺伝子発現レベルの違いを評価しました。その結果、化学療法効果別の比較では、AKT-1とPD-L1の高発現が非奏効と相関していました。治療前後の発現量変化では、AKT-1,PD-L2が上昇していました。非奏効群における治療前後の発現では,PI3K,mTOR,p70S6Kは減少していたが、PD-L2は上昇していました。腫瘍因子を含めた多変量解析では、PD-L1が化学療法の効果予測因子となり、予後予測因子はp70S6Kでありました。治療後の解析では、mTOR及びPD-L2が治療効果予測因子で、4E-BP1が予後予測因子でありました。PI3K/AKT経路とPD-L1/L2は、食道扁平上皮癌において魅力的なターゲットとなる可能性があると考えられた論文です。
これまで食道癌において、化学療法前後で遺伝子発現レベルを評価した報告は少なく、また、免疫チェックポイント阻害薬の可能性を指摘したところが、評価されたのかもしれません。

いろんな観点からご指導いただいた先輩方、助言や実験を手伝ってくれた同僚や後輩たち、いろいろな方々に支えていただき、本当にありがとうございました。6年間という長い時間を要しましたが、このような光栄な賞まで頂き、言葉に表現することができません。本当にありがとうございました。これからも進歩を続けていけるようみんなで頑張っていきたいと思います。

井上聖也

『Biomarkers predicting the response to chemotherapy and the prognosis in patients with esophageal squamous
   cell carcinoma』
   Inoue S, Yoshida T, Nishino T, Goto M, Aoyama M, Kawakita N, Yamamoto Y, Furukita Y, Takizawa H, Tangoku A
        Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2021 Mar;69(3):525-533. doi: 10.1007/s11748-021-01586-5.

2022.11.04