甲状腺疾患

当科では、甲状腺癌、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病、副甲状腺機能亢進症などに対する外科治療を行っています。

診療体制

2名の内分泌外科専門医を中心としたスタッフで診療にあたっています。毎週、放射線科との合同カンファレンスを開催し、甲状腺癌やバセドウ病に対するアイソトープ治療などもスムーズに実施できるような連携体制を敷いています。代謝・内分泌内科や病理部との密な連携体制も構築しており、正確な診断に基づく最良の治療を提供できるよう心掛けています。

甲状腺について

治療を行っている疾患

甲状腺は、首の前、喉頭隆起(のどぼとけ)のところにある、蝶のようなかたちをした小さな臓器です。1枚の羽(片葉)の大きさは縦4㎝、横幅1.5㎝程度です。体の代謝に必要な甲状腺ホルモンを作成しています。

甲状腺がん

甲状腺にできるがんには、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどいくつか種類があります。
未分化がんを除き、甲状腺がんに対しては手術での摘出をまず考えることになります。
甲状腺がんの詳しい説明はこちら → 国立がん研究センター がん情報サービス

甲状腺良性腫瘍

甲状腺にできる結節(しこり)にはいくつか種類があります。
代表的なものは以下の通りです。

1.腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)
甲状腺にできるしこりの原因として最も多いものです。甲状腺の中に1個から複数個できる良性のしこりです。通常は特に症状はありませんが、大きくなると頚部の違和感や圧迫感などの症状が出ます。通常、手術は不要ですが、前に述べたような症状を伴っているとき、またはまわりの血管や神経に悪影響を及ぼしているとき、しこりが大きく胸の中にまで達しているときなどの場合に、手術による摘出を考えることになります。しこりの原因は、過形成と呼ばれる現象で、正常の甲状腺細胞が過剰に増殖したことによります。
2.濾胞腺腫
良性の甲状腺腫瘍ですが、悪性である濾胞癌との鑑別は難しいことが多いです。また、時々、このしこりが甲状腺ホルモンを過剰に分泌することがあり、これをプランマー病、または中毒性結節性甲状腺腫と呼びます。
濾胞癌が疑われる場合、プランマー病の場合は手術による摘出をお勧めします。
バセドウ病

甲状腺を刺激する抗体(TSH受容体抗体)が原因で甲状腺ホルモンが過剰に合成・分泌される疾患です。甲状腺の腫れ、動悸や多汗、易疲労感、眼球突出などの症状がみられます。治療には、内服薬による治療、放射線(アイソトープ)治療、手術による甲状腺摘出の3つの治療法があります。

バセドウ病についての詳しい説明は「日本内分泌学会HPへ

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺は、体内のカルシウム代謝の調節をしているホルモンを分泌しています。副甲状腺にできた腫瘍などにより、ホルモンが増えすぎた状態は副甲状腺機能亢進症です。骨のカルシウムが失われて骨粗鬆症になったり、尿中のカルシウムが増えすぎて尿路結石ができやすくなったりします。治療は、腫大した副甲状腺を手術で摘出することです。

副甲状腺機能亢進症についての詳しい説明は「日本内分泌学会HPへ

甲状腺の手術について

襟状切開

全身麻酔下に手術を行います。従来、甲状腺の手術は頚部横切開(襟状切開)をおいて行ってきました。当科では症例に応じてキズの目立たない方法、内視鏡手術を行っています。内視鏡手術では、鎖骨の下、服に隠れるところにおいた小さな切開で手術を行います。どちらも手術の内容や危険性は変わりありませんが、出血や癒着で内視鏡手術での続行が難しいときは、頚部に切開を追加することがあります。

甲状腺内視鏡手術

甲状腺手術に起こりうる合併症について

甲状腺の手術に伴う代表的な合併症には以下のものが挙げられます。手術によってはこの他にも起こりうる合併症がありますので、詳しくは担当医にご相談ください。

1.出血
術中に多く出血することはあまりありませんが、もし出血量が多くなれば輸血を行うことがあります。手術が終わるときには止血を確認して終わりますが、術後何時間か経ってから再出血することがあります。これを術後出血といいます。術後出血では、頚部に血がたまって腫れることから呼吸困難を来たしますので、早急に再手術を行う必要があります。
2.反回神経麻痺
声帯の動きを司る神経が反回神経です。胸からのぼってきて甲状腺のすぐそばを走行し、喉に至ります。非常に敏感な神経であり、術中のわずかな刺激で弱ってしまうことがあります。反回神経麻痺では声がかすれたり、ものを飲みこんだ時にムセるという症状がでます。甲状腺の腫瘤が大きいときや、神経が細く確認しにくいときは損傷の可能性は高くなります。ほとんどが一時的な麻痺であり、数カ月で自然に治ることが多いですが、神経が切れてしまっている場合では症状が続くことが多いです。
3.上喉頭神経外枝麻痺
上喉頭神経外枝は、喉の筋肉の働きを調節している神経で、甲状腺の上側に沿って走行しています。この神経が障害されると高い声が出しにくくなったり、声がかれやすくなったりします。
4.副甲状腺機能低下症
甲状腺の上下左右、4隅の位置に副甲状腺と呼ばれる米粒大の臓器があります。血液中のカルシウム量を調節している働きがあります。手術後に副甲状腺の機能が悪くなって低カルシウム血症となることがあります。このとき、手や顔面のしびれなどの症状がみられます。カルシウムが低くなったときは、カルシウム剤、ビタミンDを処方します。甲状腺の片葉切除の場合は、カルシウムの低下がみられることはほとんどありません。
5.頚部の違和感、つっぱり感
手術後に頚部につっぱり感や違和感が出現することがあります。皮膚や筋肉を切開する上で、これは避けられないことです。ほとんどの場合は自然におさまります。

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