肺良性疾患

気胸

何らかの原因で肺に穴が開いて空気漏れを起こし、肺がしぼんでしまう病気を気胸といいます。気胸の治療では、まず胸にチューブを挿入して脱気を行います。脱気のみで自然に治癒することもありますが、そうでない場合は追加治療を行います。

気胸の治療

1. 手術

全身麻酔下手術で肺の穴が開いている部分を切除します。手術のほとんどは胸腔鏡(内視鏡)を用いて行うため、1-2cmの小切開を3か所ほどおくことで行うことが可能です。

2. 胸膜癒着療法

薬剤により、肺と胸の内側の壁を癒着させて空気漏れを止めてしまう方法です。

3. 気管支塞栓療法

気管支鏡(内視鏡)を用いて、空気漏れを起こしている気管支にEWSと呼ばれるシリコン製の栓を詰める方法です。手技が難しく、テクニックを要するため、行える施設は限られます。当科では豊富な経験を基に多数のEWSを行っており、特に肺気腫の患者さんでは約半数でEWSのみで気胸の治癒を得ています。

4. 胸腔内フィブリン糊大量注入療法

胸腔内にフィブリン製剤(止血剤・血液製剤)を注入し、空気漏れに対して糊で蓋をする治療法です。とくに 肺気腫、間質性肺炎の患者さんに有効な治療法で、肺気腫では約8割、間質性肺炎では4割ほどの患者さんで気胸の改善を認めています。

 

図:肺にあいた穴(瘻孔)にフィブリンを注入し、空気漏れが止まりました。

5. 併用療法、集学的治療

手術、癒着療法、塞栓療法、フィブリン注入療法などを組み合わせたり、複数回行ったりすることにより、気胸の治療をより効果的なものとすることができます。当科ではこのような併用治療により、難治性気胸(空気漏れが止まりにくい気胸)のうち、肺気腫では約9割、間質性肺炎では約6割で気胸の改善を得ています。

手掌多汗症

手掌多汗症では、少しの精神的緊張などで手のひらやわきの下に異常に汗をかくという症状がみられます。

手掌多汗症に対しては胸腔鏡下胸部交感神経焼灼術という手術を行っています。これは胸腔鏡というカメラを用いて胸の中にある交感神経を電気メスで焼くという手術で、全身麻酔で行います。原則として両側行いますが1時間程度で終わります。傷はわきの下に数ミリのものが2、3ヶ所残るだけでほとんど目立ちません。手術直後から効果が現れ、手のひら・わきの下の汗はほとんどなくなります。効果はほぼ100%の症例で得られますが、代償性発汗といって術後に背中や腰、太ももなどに汗をかくようになるという副症状も高率に出現します。ですから、手術に踏み切るか否かは、患者さん本人がどれだけ症状で悩んでおられるかがポイントになります。

漏斗胸

漏斗胸の患者さんに対してはNuss法という低侵襲手術を行っています。従来は前胸部に大きな切開を加え、肋骨を一旦切断した上で胸郭の形を整えるというRavitch法を中心に行っていましたが、Nuss法が開発されてからはこの術式を積極的に取り入れてきました。胸の左右でそれぞれ数㎝切開し、骨格矯正用の金属バーを挿入します。胸の陥凹の程度や位置によって1本または2本使用しています。原則的に2年間、金属バーを留置しておき、その後バーの抜去術が必要です。2回の手術が必要なことはデメリットですが傷は側胸部に小さなものが残るのみで美容面で優れています。手術時間も従来の方法に比べ格段に短縮され、より侵襲の小さな手術と言えます。

診療トップへ戻る