CTリンパ管造影を用いたセンチネルリンパ節の転移診断

センチネルリンパ節とは、がんが最初に転移すると想定されるリンパ節です。 リンパ管はリンパ節で枝分かれしていくため、センチネルリンパ節に転移がなければその先への転移はない可能性が高いと言えます。がん治療においてリンパ節転移の有無、およびその範囲は治療方針に大きく関わるため、治療前に診断することは重要です。

当科では腫瘍からのリンパ管を造影し、CT検査でリンパ管・リンパ節を観察することで、術前の転移リンパ節の有無及び局在診断を行っています。

乳がん

腫瘍近傍と乳頭に造影剤を注射し、乳房から腋窩に向かうリンパ管、リンパ節を観察します。この検査により、センチネルリンパ節の個数や解剖学的位置を推測することができます。またリンパ管やリンパ節の染まり方を詳細に検討し、センチネルリンパ節の転移診断も行っています。

Nakagawa M, Preoperative diagnosis of sentinel lymph node (SLN) metastasis using 3D CT lymphography (CTLG). Breast Cancer (2016) 23:519–

食道がん

食道がんの治療には手術治療と内視鏡的治療があります。手術治療では、食道を切除するだけでなく、縦隔という胸の中にある気管や食道周囲のリンパ節を摘出し、リンパ節転移の有無を調べます。もし手術の前にリンパ節転移がほとんど見られない、粘膜固有層にとどまる浅いがんであるということが正確に診断できれば、内視鏡的治療のみで治療できる可能性があります。食道がんに対しては、内視鏡下に腫瘍周囲に造影剤を注入し、CT検査を行うことでセンチネルリンパ節の診断を行っています。食道がんの場合、センチネルリンパ節はふつう、縦隔や頸部あるいは腹部に数個あります。

<参考文献>

  1. 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会より引用・一部改変
  2. センチネルリンパ節生検 手技・エビデンス・ピットフォール 丹黒 章 編 日本医事新報社

肺がん

CT検査などで早期がんと思われる所見であっても、肺がんでは所属リンパ節の転移を認める場合が多くあります。術前に転移リンパ節の有無とその範囲を正確に診断できれば、リンパ節郭清を省略したり、切除範囲を小さく留めることが可能になり、身体に負担の少ない治療が可能になります。

肺がんに対しては、気管支鏡下にマイクロカテーテルを用いて腫瘍近傍に造影剤を注入し、CT検査を行うことでセンチネルリンパ節の転移診断、局在診断を行います(臨床試験)。現在、有効性について検討中です。

図1.気管支鏡下に造影剤を注入
図2.腫瘍近傍の造影剤とそこからのびるリンパ管(3DCT)

Takizawa H, Computed tomography lymphography by transbronchial injection of iopamidol to identify sentinel nodes in preoperative patients with non–small cell lung cancer: A pilot study. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012 Jul;144(1):94-9.

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