テーマ : 『外科学の新たな開港』~社会で機能するProfessionalismの追求~
Realizing Ideals of Professionalism in Surgery
The 108th Annual Congress of Japan Surgical Society
May 15(THU) ~17(SAT), 2008
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監崎孝一郎 先生
『GFPラットを用いた胎仔肺移植モデルのドナー組織間再融合の組織学的検討』
【はじめに】Rat胎仔肺組織の成体肺実質内への移植実験を行い、Donor(D)組織はRecipient(R)肺内に生着分化する事を示した。移植部位は肺内環境が重要で、R肺のmechanical
stretch増大はD片の肺胞領域への分化を促進することを示した。また、長期的観察でD片は、形態学的にR肺組織と類似するため、GFP-Ratにて境界域をより明瞭にした。
【目的】今回は、細切したD胎仔組織の再融合/交通に重点を置き、実験を行った。
【方法】成体LEWをR、胎齢17日のGFP-LEWとLEWをDとした。GFPとLEWの胎仔から両肺摘出後、細切混同した。R肺内にD組織注入移植、1,2,4週で犠牲死、光学/蛍光顕微鏡下でD片を検討した。
【結果】D片は、R肺と肺胞レベルの交通を認め、経時的に肺胞上皮がI型肺胞様の形態をとった。蛍光顕微鏡下でD組織間同士は、蛍光GFP胎仔肺組織と非蛍光LEW胎仔肺組織が、融合/交通していた。
【結論】R肺実質内で、D片同士が、再融合/交通することを示した。
■山井礼道 先生
『食道扁平上皮癌に対するTriterpenoid (Supplement)を併用した化学療法の基礎』
【はじめに】近年,phytochemical supplemntの中でtriterpenoid(以後;TT)の抗腫瘍効果の報告が増えている.われわれの施設は以前にTTであるbetulinic
acid(以後;BA)やasiatic acidで抗腫瘍効果を報告している.
【方法】食道癌Cell lineを用いて、分子量が同じTTのBA, ursolic acid(以後;UA), oleanolic acid(以後;OA)の抗腫瘍活性を調べ,CDDP,
5-FU, CPT-11との併用効果を調べた.
【結果】IC50はBAで13.9μM, UAで33.3μM, OAで121.3μMであった.BAと5-FU, BAとCPT-11, UAと5FUで相乗または相加効果を認めた.
【結語】supplement併用化学療法は一部の組み合わせで相乗,相加効果があり,抗癌剤減量の可能性が示唆された.現在,肺転移,腹膜播種モデルで毒性と併用効果を検証中である.
■吉田卓弘 先生
『ヒト食道癌細胞株のXenograftを用いたFP療法に対する耐性関連遺伝子のcDNA Microarrayによる網羅的解析』
【目的】FP療法耐性食道癌モデルを作製し、化学療法に対する耐性化発現メカニズム解明する。
【方法】マウスの皮下にヒト食道癌細胞株の浮遊液を注入、注入後6週目よりFPの投与を開始。耐性化発現過程を再現したXenograftを用いて、経過中の腫瘍組織内の遺伝子についてマイクロアレイを行った。
【結果】1)耐性化の過程で2倍以上の発現変化を認めた遺伝子群、2) 5-FU代謝関連酵素遺伝子およびEGFR,ERBB2の遺伝子発現変化、3)耐性化したXenograftのみで高発現を認めた遺伝子群が得られた。3)の遺伝子群により分子ネットワークを解析、PI3K/Aktシグナルの活性化を認めた。一方、主要な5-FU代謝関連酵素の遺伝子群にはほとんど変化を認めなかった。
【結語】耐性化メカニズムに5-FU代謝関連酵素遺伝子発現の変化よりむしろPI3K/Aktシグナルの活性化の関与が推察された。
■松岡 永先生
『肺癌におけるindocyanine greenを用いたセンチネルリンパ節の同定法』
肺癌のセンチネルリンパ節(SN)の同定法として、indocyanine
green(ICG)を用いた方法の開発のため、ブタにおける実験を施行し臨床応用している。(実験)ブタ(40kg)を左側臥位で全身麻酔下に、開胸し右肺の肺実質にICGを0.5ml(5mg/ml)を注入。蛍光観察装置を用いると、SNおよびリンパ流は白色光として同定された。(臨床応用)全身麻酔下に開胸後、腫瘍の近傍にICGを0.5ml注入し、蛍光観察装置を用いてリンパ管やリンパ節の同定を行う。In
vivoでは蛍光観察装置でリンパ管が白色光として観察可能であったが、リンパ節は同定困難であった。しかしex
vivoでリンパ節に割を加え観察するとリンパ節の周囲から内部へ向うリンパ流が描出された。(考察)色素法では炭粉沈着により黒色変化した縦隔リンパ節は色素の流入が同定しにくい。しかし、リンパ管を同定して流入リンパ節を摘出し割面で観察すればICGの流入を確認でき、SN同定に大変有効であると思われた。
■井上聖也 先生
『術後急速に両側肺びまん性再発した粘液産生乳頭型腺癌の一例』
【はじめに】術後急速な両側肺びまん性再発し、約7ヶ月で死亡の転帰をたどった粘液産生の高分化乳頭型腺癌の一例を経験したので報告する。
【症例】50歳代女性、帰来健康であった。咳嗽にて近医受診、胸部レントゲン写真で左下肺野異常陰影を指摘された。発熱なく、炎症反応軽度、腫瘍マーカー異常値なし、ツベルクリン反応陰性、喀痰検査も異常なかった。胸部CTにて左下葉の大部分を占める空洞病変(内部液体貯留)と周囲のすりガラス陰影を認めたため当院紹介となった。PS=1、BI=0。気管支鏡検査、経皮的空洞内液体穿刺にても、起因菌や悪性所見なく確定診断が得られなかった。約一ヶ月間経過観察中にWBC14700/μl、CRP18.5mg/dlと炎症反応を認め、抗生剤投与したが、改善傾向になく、腫瘍マーカー再検したところCEA9.5(<2.5ng/ml)と上昇していた。また、PET/CTでSUVmax11.513.9と後期像で漸増パターンを示した事で肺癌も否定できないとのことで手術となった。左下葉切除+横隔膜合併切除(高度炎症による癒着)を行い、迅速病理診断で、炎症性を考えるが、肺胞上皮型腺癌も否定できないとのことでリンパ節郭清(ND2a)を追加した。永久組織診断で、粘液産生の高分化乳頭型腺癌と診断され、pT2(p0)pN0M0
stage
IBで、リンパ管浸潤はなかった。
【転帰】軽快退院し、UFT内服で経過観察していた。術後約2ヵ月目に咳嗽出現し、胸部レントゲン写真で両側中下肺野異常陰影を指摘された。胸部CTで、縦隔リンパ節腫脹はないが、背側を中心に両側肺びまん性に浸潤影を認め、空洞化病変とすりガラス陰影が散在していた。術前の左下葉の陰影と類似しており、気管支鏡検査にて高分化乳頭型腺癌であり病変の再発との診断を得た。化学療法行ったが、腫瘍マーカーの上昇はないものの、空洞病変の陰影増大や新規病変の出現がみられ、術後約7ヶ月目に死亡された。
【考察】通常、粘液産生乳頭型腺癌は、経過が緩徐であるが、今回のような急速な転帰をとることは比較的まれと考える。また、縦隔リンパ節腫脹もなくリンパ管浸潤がないとすれば、今回の再発形式は、背側中心に肺炎様に陰影が出現していることから考え、血行性転移よりも経気道的に散布されたと推測する。術前の気管支鏡検査などでは悪性細胞の出現はなかったが、術式の選択や手術時に注意点はなかったか。また、再発時の治療の対応など若干の文献的考察を加え報告する。
■田中園美 先生
『進行乳癌に対するTS-1+Docetaxel術前化学療法,およびprotocol非完遂症例の検討』
当施設では進行乳癌に対してTS-1 (day1-14 80mg/m2)+Docetaxel(day1 40mg/m2), 3 weeks×8
cyclesの術前化学療法を多施設共同試験で進行中であり,2006年12月から2007年11月までの2年間に22例の症例登録があった.現在,13例に対して手術を行い,内10例がプロトコール完遂症例であった.効果判定はCR
2例(完遂症例の20%), PR10例, SD1例, PD 0例であった.非完遂症例は3例であり,以下の症例であった.症例1) 統合失調症の現病歴があり,本人,家族の同意のもと登録となった.1クール投与後,抗癌剤投与日に受診しないことが続いたため,インフォームドコンセントの結果,手術に移行した.症例2)
てんかんにて内服治療中であった.内服薬にフェニトインが含まれており,慎重に化学療法を行ったが,てんかん症状の悪化を認め,フェニトインを中止していた.5クール目にてんかん症状の悪化と骨髄抑制を認め,手術に移行した.症例3)
化学療法3クール目に著明な皮膚症状,消化器症状を認めた.4クール目を中止し経過観察していたが、腹膜炎を発症し、手術施行.原因は回腸穿孔による腹膜炎であった.病理学的にはサイトメガロウイルス腸炎による回腸穿孔が疑われているが、TS-1との因果関係は不明である.考察)
近年,乳癌領域ではcapecitabineやTS-1の高い評価により,5-FU系抗癌剤が見直されている.TS-1は既に胃癌領域でkey drugとなっており,Docetaxelと併用することは基礎研究でも5-FUの効果を修飾することが報告されており,臨床の現場でも高い奏功率が得られることが報告されている.乳癌領域でTaxan系抗癌剤はすでに高い評価を得ており,このことも考えると,乳癌領域におけるTS-1+Docetaxelも非常に期待のもてるレジメの一つであると考えている.完遂症例の20%
(2例)はCR症例であり,今後更なる症例の蓄積が必要である.5-FU系抗癌剤で多い消化器症状は,完遂症例でも認められた.サイトメガロ腸炎の症例は3クール開始まで順調に完遂しており,代謝異常は否定的である.蓄積性の副作用は否定できないが,現病歴でサルコイドーシスが疑われており,T
cell系の異常も考え現在検討中である.フェニトインは5-FU系抗癌剤との併用でフェニトイン代謝が阻害され血中濃度が上昇することが分かっており,フェニトイン内服患者の投与には注意が必要である.
第108回日本外科学会に参加してきました。
今まで、サブスペシャリティーの学会には多数参加してきましたが、一度外科学会に出してみようと、昨年、吉田先生と相談し演題を出すことになりました。外科学会はだいたいが4月の上旬にあり、異動と重なると参加しにくい背景にありましたが、幸い今年は5月中旬と絶好の参加日程となり、そのことも出してみようと思った理由です。
演題については、本教室でも食道の研究が少しずつでもすすんでいることを発信するために丹黒教授と相談の上、研究で登録することとなりました。採択率はポスターで約60%と他の学会と比べてやはり厳しい採択率ではありましたが、何とか採用されることができました。長崎へは徳島→飛行機→福岡→JR→長崎の道程で向かいました。
会場が離れていましたので、メイン会場である浦上駅を中心にさまざまな演題を聞きました。外科学会ということもあり、総論的セッションを中心に参加し、論文の書き方、手術検体を用いた臨床研究などを聞きました。最終日に研修医の先生の発表があったこともあり、3泊4日という長旅になりましたが、僕以外はメンバーが日々かわり、初日、監崎、松岡、吉田、山井(中華街)。二日目、梅本、近藤、吉田、山井、後藤(昼飯)、井上、田中(全員懇親会)。三日目、近藤、山井、井上、田中(福岡、もつ鍋)と楽しく過ごせました。全員懇親会では以前二外科に籍を置いていた向井、竹原先生がお世話になっている昭和大学横浜北部病院消化器病センター、田中教授と話しをする機会があり、二人ともがんばっているという近と、いつでも勉強しに来てくださいと暖かい言葉を頂きました。正直、3泊はいろいろな意味できつかったですが、研究を中心にして頂いている責務だと思い参加してきました。初期研修医、後期研修医の先生が非常に喜んでくれたことを考えるとこういった形で参加させて頂いたことには感謝しております。近藤先生は保健学科の講義の合間に、発表の指導で長崎まで参加して頂き、また、こっちが心配するぐらい気前よく研修医の先生にごちそうして頂きました。この場でお礼を言いたいと思います。
山井礼道
■(右から)
梅本 淳先生、吉田卓弘先生、山井礼道先生、後藤正和先生