胸腺腫と胸腺がん

胸腺とは

胸腺(きょうせん)は、胸骨の裏側、心臓の上前部(前縦隔:ぜんじゅうかく)にあり、幼児期から小児期にかけては、体の免疫を担う重要な働きをしています。胸腺は、成長するに従って徐々に小さくなっていき、成人になると退化して脂肪組織となり、その働きを終えます。

胸腺に発生する主な腫瘍に胸腺腫と胸腺がんがあります。当科ではこれらに対する手術療法、化学療法を行っています。
また、重症筋無力症の治療として胸腺摘出術を行うことがあります。全ての重症筋無力症の患者さんが胸腺摘出術の対象になるわけではなく、胸腺腫を合併している場合、年齢が若く抗体価が高い場合などに手術を行います。

胸腺腫・胸腺がんの詳しい説明はこちら → 国立がん研究センター がん情報サービス

胸腺摘出術について

胸腺摘出術には「1.骨正中切開で行う方法」と「2.内視鏡」を用いた方法があります。

  1. 胸骨正中切開で行う方法(図1)
    従来から行われてきた標準的な術式です。胸骨を正中で切開し、胸腺を摘出する方法です。切開した胸骨は、糸やワイヤーを用いて縫合します。術後、骨の切開による痛みがやや強いかもしれません。また、手術創も大きくなります。
  2. 内視鏡を用いた方法(図2)
    胸腺を部分的に摘出する方法では、側胸部に3~4か所、小切開をして手術を行います(胸腔鏡手術)。当科では胸腺を大きくとる手術(拡大胸腺摘出術)についても内視鏡手術を行っています。鳩尾と左右の胸部に小さな切開をおいて、炭酸ガスを使って胸の中の視野を確保しながら行います。手術後の痛みが少ないため、回復が早い、キズが小さいなどのメリットがあります。ただし、腫瘍が大きなとき、腫瘍が周囲の臓器に浸潤している場合などには適しません。

胸骨正中切開で行う方法  内視鏡を用いた方法

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