研究

食道グループ臨床研究

無作為臨床試験
A new candidate supporting drug, rikkunshito, for the QOL in advanved esophageal cancer patients with chemotherapy using docetaxel/ 5-FU/ CDDP. 食道癌化学療法における六君子湯のQOLスコア改善の効果
The Effects of the Herbal Medicine Daikenchuto (TJ-100) After Esophageal Cancer Resection, Open Label, Randomized Controlled Trial 食道癌根治術後の大建中湯投与の効果
A randomized, open label study of the efficacy of prophylactic 24-hour low-dose landiolol for atrial fibrillation in transthoracic esophagectomy. 低用量ランジオロール予防的投与による胸部食道癌術後心房細動の抑制効果
臨床試験・介入研究
食道癌術後の疼痛管理におけるアセトアミノフェン静注製剤定時投与の効果の検討
ダ・ヴィンチXi手術システムを用いたロボット支援腹腔鏡下噴門形成術の有用性と安全性の検討
臨床試験・介入なし
食道癌における個別治療の実現〜組織ならびに血清を用いた遺伝子・タンパク質発現解析〜
Sentinel Lymph Node Biopsy Using Intraoperative Indocyanine Green Fluorescence Imaging Navigated with Preoperative CT Lymphography for Superficial Esophageal Cancer. 食道癌におけるセンチネルリンパ節の同定法
治験
食道癌患者を対象とした術後補助療法としてのS-588410 第3相多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験
多施設共同研究
食道胃接合部癌に対する縦隔リンパ節および大動脈周囲リンパ節の郭清効果を検討する介入研究
消化器外科手術における周術期老人関連評価指標と術後成績に関する研究 ~National Clinical Databaseによる前向き調査研究~
日本食道学会公募研究(協力施設)
食道癌根治的化学放射線療法後CRとなった症例におけるサルベージの適応判断と予後に関する後ろ向き調査

乳腺

●CTリンパ管造影を用いたセンチネルリンパ節の転移診断

CTリンパ管造影は術前にセンチネルリンパ節の個数を解剖学的位置とともに知る事が出来る有意義な検査法です。
また、リンパ管やリンパ節の染まり方によってセンチネルリンパ節の転移診断が出来る可能性があり、さらなる低侵襲手術への応用が期待できます。

Preoperative diagnosis of sentinel lymph node (SLN) metastasis using 3D CT lymphography (CTLG).
Breast Cancer (2016) 23:519–524

甲状腺

●甲状腺未分化癌同所移植を使用した臨床モデルの作成
甲状腺未分化癌の細胞株を免疫不全マウスの甲状腺に移植し、同所移植モデルを作成しています。
作成した同所移植モデルに化学療法を施行し、小動物用PET-CTを用いて腫瘍増殖、抗腫瘍効果を評価しています。
●PET-CTにおける甲状腺異常集積症例についての検討
PET-CTにおける甲状腺癌の異常集積症例について、免疫染色等を行い、予後との関連性について検討を行っています。

肺癌・胸腺腫瘍グループの研究について

肺癌、胸腺上皮性腫瘍の分子生物学的な研究、肺癌の画像診断に関わる研究を行っています。

1. 肺癌のepigeneticな異常についての研究

肺癌の凍結検体を用いて網羅的メチル化解析を行い、癌特異的なメチル化を認める遺伝子について研究しています。
本学人類遺伝学教室(井本逸勢教授、増田清士准教授)と共同研究を行い、喫煙・非喫煙に関わらずDNAメチル化によって不活性化される新たながん抑制遺伝子としてTRIM58を同定しました。また、TRIM58はがん細胞の増殖や腫瘍の形成を抑制することを明らかにしました。(右図)

Oncotarget Vol.8 No.2 p.2890-2905, 2017

2. クロム暴露肺癌

クロムに暴露した労働者に発生した肺癌(クロム肺癌)は、過去にクロム鉱山やめっき加工工場労働者の職業病として知られていました。また、かつて地盤強化を目的にクロム鉱滓を埋め立て、後に無害化処置が行われてからもしばしば環境問題が発生しています。職業性の肺癌として米国では約50万人、世界的には数百万人の労働者が六価クロムに暴露していると言われています。

クロム肺癌では、通常の肺癌に多くみられる癌抑制遺伝子p53、癌遺伝子Ki-ras, Ha-rasの遺伝子異常の頻度は少ないことがわかりました。
ヘテロ接合性消失(LOH:loss of heterozygosity)の解析では第3染色体短腕(3p)のLOHは同程度でした。Microsatellite instability (MSI)は高頻度で、MSIの頻度とクロム暴露癧の間に相関を認めました。MSIとDNA修復遺伝子hMLH蛋白の発現の低下との間に相関を認め、hMLH蛋白の発現の低下がhMLH1遺伝子のプロモーター領域のメチル化に由来していることを示しました。その他にも、クロム肺癌では色々な癌関連遺伝子(APC, MGMT, p16)のDNAメチル化が多いことがわかりました。

Biochem Biophys Res commun 239: 95-,1997
Am J Ind Med 40:92-,2001
Mol Carcinogenesis 33:172-,2002
Mol Carcinog 42:150-,2005
Mol Carcinog, 50:89-99, 2011

3. 胸腺上皮性腫瘍のepigeneticな異常についての研究

胸腺上皮性腫瘍の凍結サンプルを用いて網羅的メチル化解析を行い、癌特異的なメチル化を認める遺伝子について研究しています。
胸腺癌、神経内分泌腫瘍では癌抑制遺伝子RASSF1の特異的メチル化を認め、発現が抑制されていることを報告しました。

Lung Cancer 111: 116-123, 2017

4. 当科で行っている肺がんの臨床研究

当科では肺がんの病期(進行度)診断の精度向上を目的とした臨床研究を行っています。病期診断がより正確になることで、患者さんはより自分に合った治療方法を選択できるようになります。その結果、肺がんの治療成績が向上することが期待されます。
具体的には①胸膜浸潤診断と②リンパ節転移診断の精度向上を目指した術前・術中検査を行っています。胸膜浸潤もリンパ節転移も肺がんの進行度に関わる重要な要素ですが、現在通常行われている検査(CT検査など)では、これらを治療前に正確に診断することは困難と考えられています。

①自家蛍光観察を応用した胸膜浸潤診断

肺は胸膜という薄い膜に包まれていますが、肺の中に発生した肺がんがこの胸膜まで及んでいるかいないか(胸膜浸潤の有無)でがんの進行度が異なってきます。肺がんが胸膜に及ぶ場合や、肺がんが胸膜を破って胸膜の外にまで発育している場合は、より進行した肺がんと考えて治療方法を考える必要があります。しかし、この胸膜浸潤の有無はCT検査などの画像検査ではわからず、手術で肺を切除して初めて診断することができます。この胸膜浸潤の診断を術中に正確に行うことで、手術方法の選択などに利用しようとする試みが、「自家蛍光観察を応用した胸膜浸潤診断」です。

手術中に特殊な波長の光を発する内視鏡装置を用いて、胸膜の表面を観察します。正常の胸膜には自家蛍光が観察されますが、肺がんが浸潤した胸膜には自家蛍光が認められない(図、黒い部分)ことを利用した診断法です。光を当てるだけなので、患者さんへの負担はありません。これまでの研究結果から、手術中に通常の白色光で観察して判断する胸膜診断法より、自家蛍光を用いた診断法の方が明かに正確であることがわかっています。

②術前CTリンパ管造影と術中ICG蛍光法によるセンチネルリンパ節同定

肺がんがリンパ節に転移しているかいないかは、肺がんの進行度を大きく左右します。しかし、リンパ節転移の有無についてはCT検査やPET/CT検査などの画像検査で正確に把握することは難しく、手術患者さんでは術前には転移がないと考えていたのに摘出したリンパ節を組織検査したら転移が見つかった、というようなこともしばしば起こります。このリンパ節転移診断を術前・術中に正確に行うことで、手術方法の選択などに利用しようとする試みが、「センチネルリンパ節同定」です。

センチネルリンパ節とは、がんが最初に転移するリンパ節のことを指し、センチネルリンパ節に転移がなければ、それ以外のリンパ節にも転移がないと考えることができます。気管支鏡で肺がんの近くに造影剤を注入しCTを撮影することで術前にセンチネルリンパ節を同定する検査方法として、術前CTリンパ管造影を行っています。これまでの研究結果から9割程度の患者さんにセンチネルリンパ節を特定することができ、正確なリンパ節転移診断に繋がる可能性が明かになってきています。

また、手術中に肺がんの近くにICGという色素を注入して、特殊な光を当てて色素の流れを見ることでセンチネルリンパ節を同定する方法として、術中ICG蛍光法を行っています。
術前CTリンパ管造影と術中ICG蛍光法を組み合わせることで、より精度の高いセンチネル同定法を実現することを目指しています。

再生グループ

近年、再生医療は様々な領域で注目されています。特にiPS細胞やES細胞を用いた研究の発展は目覚ましく、網膜や心筋などではすでに臨床応用されるまでになりました。

  1. 胎仔肺組織移植モデルを用いた肺の再生
  2. 局所幹細胞に着目した臓器再生
  3. 肺障害の修復・再生の分子生物学的メカニズム

われわれ再生グループは上記3点に関して様々な角度からの基礎研究を通して、将来の医療に少しでも寄与することを目指しています。

1.胎仔肺組織移植モデルを用いた肺の再生に関する研究

胎仔肺組織は、肺への分化が約束された組織であり、動物モデルを用いた基礎研究を通して肺再生のメカニズムに関しての研究を行っています。われわれは、これまでに胎仔肺組織をドナーとして組織移植することで、生体肺だけでなく(Kenzaki. JTCVS 2006)、ブレオマイシン線維症モデル(Toba. JTCVS 2012)、肺気腫モデルマウス(Uyama. J Med Invest)にも生着・分化することを示し、肺への分化を方向づける細胞と間葉系細胞という足場の重要性を示しています。

進行中のプロジェクト
  1. 「肺organoidを用いた肺細胞・組織移植による肺再生の試み」(基盤C)
  2. 「胎仔肺組織の生着・分化におけるBipotential細胞の役割」(若手B)

2.局所幹細胞に着目した臓器再生に関する研究

当教室は、肺・縦隔の疾患に加えて、食道・乳腺・甲状腺の疾患を日常臨床では担当させていただいています。各臓器にはそれを構成する成熟細胞に分化する局所幹細胞が存在し、われわれはその局所幹細胞に着目した臓器再生に、横断的に取り組んでいます。

進行中のプロジェクト
  1. 「iPS細胞から誘導した気管支肺胞幹細胞は障害肺の修復を加速させる」(基盤C)
  2. 「乳腺幹細胞を用いた乳汁産生機能を有する乳腺の再生」(基盤C)
  3. 「食道幹細胞を用いた食道の再生」(若手B)

3.肺障害の修復・再生の分子生物学的メカニズムに関する研究

気道・肺胞上皮の再生の道筋は、障害からの修復の過程に類似していることが知られています。われわれは、気道・肺障害モデルを用いて、分子生物学的メカニズムの重要性にも着目し、肺再生の研究に取り組んでいます。

進行中のプロジェクト
  1. 「気道・肺の障害・修復と再生におけるp53の役割~p53遺伝子改変ブタを用いた研究」(基盤C)

移植免疫・癌免疫

グループでは、第二外科の先輩方がこれまで行ってこられた、 肺移植、移植免疫を基盤として、現在、注目されている癌免疫と 癌微小環境をテーマに研究しています。研究者がトロント大学胸部外科の研究室で習得した、マウスサージェリー(マウス肺移植)の手技を癌、移植免疫を中心とした、あらゆる分野の研究に、応用することを考えています。徳島大学サイクロトロン棟に、Leica製のマイクロスコープや小動物用麻酔器、ベンチレーターを備えて、あらゆるモデルマウスの作製に取り組んでいます。

1. 肺気腫モデルマウスの確立

肺再生後の機能的評価の目的から、遺伝的にalpha-1-antitrypsin の低い、Pallid mouse を長期飼育し、マウスのlife spanである約24ヶ月の中間である12ヶ月ほどで、肺気腫を自然発症させるマウスを海外から購入飼育し、その運動能力、呼吸機能解析、組織像を研究してきました。
この肺気腫モデルマウスは、肺移植実験、肺再生実験、に用いることができ、また、欧米では注目度の高い、alpha-1-antitrypsin欠損モデル、また自然発症の肺気腫モデルとして有用であることを示しました。[1]


BioSystem for Maneuvers, SFT3410 with AUT6100 series BUXCO, Wilmington, NC

また、当科において購入しているBaxco社のプレチスモグラフの原理を用いた呼吸機能解析装置を使用し、小動物の呼吸機能解析を詳細に行える装置を保持しており、モデルマウスの解析の方法論、技術を保持しています。

1. Yoshida M, Sakiyama S, et al. Functional evaluation of pallid mice with genetic emphysema. Lab Invest. 2009; 89(7):760-768.

2. 移植免疫

カナダ、トロント大学胸部外科研究室にて、PTX-3という蛋白に着目した、慢性拒絶反応の研究をしています。肺移植後の急性拒絶反応は現在まであらゆる研究がなされてきましたが、慢性拒絶反応の原因に関しては、不明な点が多く、北米の施設では、現在も様々な研究がなされ、その原因究明に力が注がれています。[2]


マウス肺移植後の移植肺のT細胞とB細胞の免疫染色の写真です。肺の組織は小宇宙のように見えます。数多くの細胞が、相互に働き合っており、未だ解明されていない事項が多く存在します。

慢性拒絶反応のT細胞の集簇している免疫染色の写真です

2. Yoshida M, Liu M, et al. Pentraxin 3 deficiency enhances features of chronic rejection in a mouse orthotopic lung ransplantation model.
Oncotarget. 2018 Jan 3;9(9):8489-8501.

3. 肺癌同所性移植モデル、肺切除モデルを使用した癌微小環境の探求

肺癌同所移植モデルの技術と、マウス肺移植モデルの技術を組み合わせ、肺癌同所移植マウスへの“抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬投与モデル”や“抗がん剤投与後の肺切除モデル”を作成し、今まで、ヒトの臨床研究ではなし得なかった、癌切除後の長期経過、癌周囲環境、周囲間質の免疫の環境、また、切除肺や残存肺全体の組織学的検索、相互に作用する血中、組織中のサイトカイン、ケモカインなどの蛋白の変化を探求する。

また、これらの探求から、現在の抗癌剤治療に加えて手術療法の真の役割も明らかにしたいと考えています。手術手技を組み合わせることで、ヒトの組織では届かなかった、肺全体の免疫環境を把握できることが可能となれば、各種抗癌剤、免疫チェックポイント阻害剤による、癌とその周囲組織環境変化の詳細、また、癌の組織型別、手術療法を加えること等への様々な治療過程の免疫機構の変化を逐次的に探求可能となり、さらなる個別化治療の飛躍につながると考えています。

4. 今後の研究予定

【探求する癌周囲環境】①腫瘍リンパ管の役割 ②がん関連線維芽細胞の役割 ③マクロファージの働き ④がん幹細胞をとりまく微小環境(ニッチ=がん細胞、免疫細胞、がん間質細胞、血管) ⑤腫瘍内の不均一性、多様性 ⑥間質細胞の不均一性、腫瘍浸潤リンパ球、抗原提示機構APM(antigen processing machinery) ⑦制御性T細胞を中心とした免疫応答、癌微小環境を構成するPDL1自身の構造異常 ⑧TGF-β ⑨細胞オーミクス解析 ⑩造腫瘍性促進機構の解明、MMP(matrix metaroprotease)を標的にしたがん微小環境の制御。ニボルマブ群に関してmultiplex immunofluorescence でcytokeratin - positive tumor cell, CD68+macrophage, FoxP3+ regulatory T cell 、CD8+ Tcell,PD-1+ cell, PDL-1 cell を染め、相互の位置関係、細胞数を確認する。

【遺伝子変異】凍結肺組織は、上記のデータを確認後、ホモジェナイズし、DNA,RNA抽出。主に遺伝子の変異を治療前後で測定し、その変異の状況を確認し、各モデルで、どのような遺伝子が変異しているかを確認したい。これはヒト検体では困難な研究であり、このマウスモデルの研究で肺全体の状況を把握できることが大きな利点である。

上記のような研究を通して、医療への探究心を養い、社会への貢献を目的として、楽しく研究できる環境と有意義な研究を目標として日々取り組んでいます。